どうなっている?西洋医学との融和を目指している現代中国医学

日本には現在でも漢方医学がよく保存されいます。街角に営業している漢方薬店、見かける鍼灸治療院などを始め、有名大学でも漢方薬を積極的に研究しており、その成果を疾病治療に取り込もうという活動も見られます。

しかし、同時にさまざまな考え方が日本における東洋医学には見出されます。そしてうっかりそれらの治療に関わると自分が期待していたものとはまったく違うものであることにがっかりすることもあるわけです。

現代の中国が本場だと思われる中医学の権威は東洋医学の中でも取り沙汰される力があります。医学系大学は中国との連携を保ちながら研究しているケースが多いことによります。

ですからまず、利用者としては中医学の歴史を簡単に知っておくことが有益でしょう。現代の中医学は中華人民共和国が成立した以降に整理されて再構成されている東洋医学です。

その間、大きな事件が中華人民共和国を襲いました。文化大革命です。文化革命に位置するこの革命は極めて徹底的に伝統的な価値観を排除しました。

親子の心情ですら破壊したといいますから、その激しさを想像するのは簡単でしょう。伝統の技術を伝えていた多くの専門家は身を隠すか、自殺するのでなければ、共産党軍に連行されて拷問や処刑の対象になったと伝えられています。

このときに伝統である中国医学は徹底的に迫害され排除されたといいます。現在でも医学の説明概念に気という言葉が使用できないそうです。

上手く身を隠して生き残った伝統の伝承者はわずかに過ぎません。もっとも、わずかといってもまったくゼロではないので、現代においても中国に出かけて排除され尽くされなかった技術を学ぶ機会は貴重です。

つまり一旦完全に中国では伝統の中国医学が失くなったと考えるべきでしょう。その後、中国医学を再構成するために西洋医学の概念を大幅に取り込んできたと考えられます。

それに対して、中国伝来が日本で発展した中国医学を漢方医学と呼べるでしょう。中国と同様に日本でも西洋医学への対応に苦労した歴史がありますが、日本では完全に排除しようという動きがありませんでした。

しかし、日本の漢方医学でも西洋に対抗しうる枠組みを求めていたことは同じです。そして中国が本場であるという権威に対する畏怖は日本では相当強く、中医学と協力しあうという形態になっています。

その結果、伝統的な漢方医学的な枠組みで治療を行う人は極めて数が少なくなっています。中医学と連携しながら漢方治療をする専門家が多数派を占めているのです。

ただし、現代的に改定された中国医学、つまり中医学がまったく正しいかは意見が分かれて当然でしょう。これは考え方によります。西洋的な用語が私たちにわかりやすいのは大きなメリットです。

また即効性を求める思想に支えられた実験によって効果が確認されようとする試みも大変有益でしょう。また、この試みによって症状が改善されるのは歓迎できます。

しかし、西洋の医学で理論づけできないために棄却されてしまう成果も少なくありません。また症状が消失することと、病気が消失することは同じではありません。麻酔薬を投与すればほぼ確実に症状は感じられなくなりますが、病気は治りませんよね。

そもそも現代中国は物質を主とする考え方が強すぎるのにも問題を感じます。それを人間の生命に当てはめて問題を感じない人はいないでしょう。

人間の身体は単なる物質の集合体ではない、というところから東洋思想は始まっていたはずなのです。物質が集まり、自ら運動を開始して、陰陽を形成し生命の営みを保っているという気の理論を使えないのであれば、それは東洋医学と同じなのでしょうか。